行政書士試験において記述式は重要な設問です。
配点も高いため、記述式で得点できれば合格へ大きく近づくことができるでしょう。
しかし記述式を苦手とする受験生も多いと思われます。
そこで今回は行政書士試験の記述式の解き方と対策について紹介していきます。

 

 

記述式の解き方

記述式の解き方は以下の通りになります。

 

@何を問われているかを明確にする
A解答の骨組みを決める
B当てはまる文章や語句を考える
C40字程度にまとめる

 

 

解き方の例

では実際の問題を用いて解き方を解説していきます。

 

平成28年度試験 問題44

A市は、A市路上喫煙禁止条例を制定し、同市の指定した路上喫煙禁止区域内の路上で喫煙した者について、 2 万円以下の過料を科す旨を定めている。Xは、路上喫煙禁止区域内の路上で喫煙し、同市が採用した路上喫煙指導員により発見された。この場合、Xに対する過料を科すための手続は、いかなる法律に定められており、また、同法によれば、この過料は、いかなる機関により科されるか。さらに、行政法学において、このような過料による制裁を何と呼んでいるか。40 字程度で記述しなさい。
〜一般財団法人 行政書士試験研究センターHPより〜

 

まずは何を問われているかを明確にします。
この問題で問われていることは、「Xに対する過料を科すための手続は、@いかなる法律に定められており、また、同法によれば、この過料は、Aいかなる機関により科されるか。さらに、B行政法学において、このような過料による制裁を何と呼んでいるか」の3つです。

 

次に解答の骨組みを考えます。
「Xに対する過料を科すための手続は、○○法律に定められており、この過料は、○○機関により科される。このような過料による制裁を○○と呼んでいる。」

 

そしてこの○○に当てはまる言葉や文章を考えていきます。
これは地方自治法と行政法学からの出題です。

 

地方自治法

 

第十四条 
普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。
2 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
3 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮こ、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

 

第百四十九条 
普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
一 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
二 予算を調製し、及びこれを執行すること。
三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。
四 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。
五 会計を監督すること。
六 財産を取得し、管理し、及び処分すること。
七 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。
八 証書及び公文書類を保管すること。
九 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。

 

第二百五十五条の三 
普通地方公共団体の長が過料の処分をしようとする場合においては、過料の処分を受ける者に対し、あらかじめその旨を告知するとともに、弁明の機会を与えなければならない。

 

〜出典:e-Govウェブサイト(http://www.e-gov.go.jp)〜

 

秩序罰とは、軽微な義務違反行為に対する行政罰です。

 

これらを考慮して○○に答えを当てはめると
Xに対する過料を科すための手続は、地方自治法に定められており、この過料は、普通地方公共団体の長(A市長)により科される。このような過料による制裁を秩序罰と呼んでいる。

 

これを40字程度にまとめます。
手続は地方自治法に定められ、A市長により科され、このような制裁を秩序罰と呼んでいる。

 

行政書士試験研究センターの解答
A市長により、地方自治法の定める手続きによって科され、これを秩序罰と呼ぶ。

 

色々と解き方は存在しますが、大体はこのような解き方になります。

 

 

40字以外の出題もある

通常の記述式は40字程度で記述するよう求められますが、例外もあります。
平成26年度の試験では25個と20個のマス目に分かれ、それぞれ10〜20字で記述せよ、という問題が出題されました。
しかし、内容自体は基本的なことを問われているので、こういったイレギュラーな問題でも落ち着いて対処すれば大丈夫です。

 

平成26年度 問題46
Xは、甲土地をYに対して売却する契約(以下、「本件契約」という。)を締結したが、Xは、本件契約時において、売却した甲土地はAが所有するものであってX に属しないことを知らなかった。その後、Xは、Aに対して甲土地の売却を申し入れたが、拒絶されたため、結局、その所有権を取得してYに移転することができなかった。このような場合において、善意の売主Xは、買主Yに対し、本件契約を解除する旨の意思表示をしたい。解除にあたって、本件契約時に甲土地の所有権がX に属しないことについて、Yが悪意のときは、どのようなことをし、Yが善意のときは、それに加えどと?のようなことをすればよいか。「Yが悪意のときは、」および 「Yが善意のときは、それに加えて、」に続けて、民法の規定を踏まえて、それぞれ 10 字〜20 字程度で記述しなさい(「Yが悪意のときは、」およぶ「Yが善意のときは、それに加えて、」は、記述すべき字数には含まれない)。
〜行政書士試験研究センターHPより〜




記述式の出題率

記述式では、ある程度の傾向と出題率が存在します。
出題率が高いからと言って、その年にも出題率が高い分野から出るとは限りませんが、出題率される確率は高いものを意識して学習するメリットはあるでしょう。

 

【民法の出題率】

  1. 債権
  2. 物権
  3. 総則

 

民法で最も出題されている分野は債権です。
従って、債権は記述式対策として重点的に学習しておきたい分野と言えます。

 

【行政法の出題率】
行政法で出題率が高いのは行政事件訴訟法です。
というより、ほとんど行政事件訴訟法からの出題です。
行政法の記述式対策は行政事件訴訟法を中心におこないましょう。

 

 

記述式の対策

記述式の対策としては問題集を使った学習が一般的です。
それに加え、普段の学習から記述式を意識して勉強することが大事です。

 

書く練習をする

記述式で難しいのが文章を書くことです。
問われていることを把握し、その答えを導き出し、40字程度にまとめます。
この40字程度にまとめる作業が意外と難しいものです。
これは訓練するしかありません。
この作業が苦手だという人は、記述式の問題集を利用して繰り返し文章をまとめる練習をしましょう。

 

 

条文と判例を勉強

記述式は主に条文と判例から出題されます。
記述式を苦手とする受験生は多いと思いますが、問題自体は難しいことを問われません。
条文や判例の基本的な部分を問われるので、普段の学習から記述式で問われそうなことを意識しながら勉強しておく癖をつけましょう。
また重要な条文に関しては暗記するくらい目を通して、要件や期間などをしっかり覚えておくことをおすすめします。

 

 

問題を自分で作ってみる

これは私がやっていた方法ですが、問題を自分で作ってみるのもおすすめです。
問題を自分で作る一番のメリットは、理解力が高まることです。
問題を作るという作業は十分に理解していないと作れません。
きちんと理解していないと問題として成立しない可能性があるためです。
そのため、条文を読み込む際も、問題を作るために十分に理解するよう読むようになります。

 

問題の作り方をひとつ紹介します。

 

民法

(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第四〇〇条 
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
〜出典:e-Govウェブサイト(http://www.e-gov.go.jp)〜

 

この条文を記述式に出題されそうな問題にします。

 

債権の目的が〇〇の引渡しであるときは、債務者は、その〇〇をするまで、〇〇をもって、その物を保存しなければならない。

 

記述式で問われるのは、主に5W1Hです。
何を、誰が、いつ、どのように、といったことが問われます。
なので、その部分のインプットとアウトプットのために穴埋めにして問題を作ります。
私はスマホのメモ帳機能を使って、通勤中や昼休憩など隙間時間を利用して勉強していました。
時間はかかりますが、理解が深まること、簡単に学習できることといったメリットがあるので是非、試してみてください。




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